ドンパヤーイェン-カオヤイ森林地帯
ドンパヤーイェン-カオヤイ森林地帯はタイバンコク北東部に広がる森林地帯である。サラブリー県東部からナコーンナーヨック県、プラーチーンブリー県、サケーオ県北部、およびナコーンラーチャシーマー県、ブリーラム県南部をまたいでカンボジア国境まで広がる広大な森林地帯であり、カンチャナブリー県、ターク県などに広がる西部森林地帯(Western Forest Complex)に対して東部森林地帯(Eastern Forest Complex)と呼ばれることもある。
概要
ドンパヤーイェン-カオヤイ森林地帯は大きな森林地帯であり。その森林の濃さのために開発が遅れた地域であった。チャクリー王朝初期には開発を促すために一部の地区を免税地区に設定し入植者を促したこともある(これが現在のナコーンナーヨック(「免税の町」という意味)である)が、山岳部は鬱蒼とする森林と、その高低差のために稲作に適さなかったことから、開発が大幅に遅れた。1932年の立憲革命の時には、その未開発の土地が立憲革命の敗者となった王族の逃亡地として機能したことから、人民委員会(現在の内閣)はこの地域を閉鎖されさらに開発が遅れた。
この未開発地域の自然資源の保護が行われたのは1959年には時の総理大臣サリット政権の時で、このときは制令に基づく保護地区に指定された。2年後の1961年には仏歴2005年国立公園法が制定され、1962年9月18日にはこの森林の一部がカオヤイ国立公園として正式に保護され、その周辺の地域も国立公園や野生生物保護区などとして次々と保護地区に指定されることになった。その後中心的存在であるカオヤイ国立公園のアセアン遺産登録などを経て、2005年にはユネスコの世界遺産に登録された。
地形
この地域内の地形は山岳地帯で、山が複雑に入り組んでおり、1000m級の山も多数存在する。地域の80%以上は常葉樹林地帯になっている。地域南側にタイ東部北側の住民の水道および下流の工業用水を提供するバーンパコン川の源流となって、また地域北側はイーサーン南部へ水を提供している重要な水源となっており、タイにおける重要な水資源の一つである。
生物
2005年の世界遺産登録時点では、112のほ乳類、392の鳥類、200の両生類とは虫類が発見されている。インドゾウなどの東南アジアの森林では一般的な動物の個体数も多く、この地域のドライブウェイではドライブ中に何らかの野生動物がみられる可能性が高い。
珍しい種類ではシロテテナガザルやその食べ残しで生息するマレーヤマアラシ、もっとも原始的な猿といわれるスローロリスや、この地域のみでしかみられない世界最大のオオサイチョウが生息する。
開発と保護
1980年以降のタイの経済発展に伴い中流階級の保養地として「バンコクから日帰りで望める観光地」といわれるまで人気が高まり、海のパッタヤーに対して、カオヤイ国立公園を中心に山のリゾート開発が行われている。事実、高級ロッジなども作られており、実際に保養地として機能している。
一方稲作には向かない地域であるが、牛の放牧などには向いており、地域北側の保護されていない地域ではこの放牧が行われている。ここで生産される農産物にはチョークチャイ牛乳などのブランドとして定着したものもある。またワイン用のブドウなども生産され、カオヤイ・リザーブと呼ばれる国内最高級ワイン・ブランドも生産されている。
また、この地域を縦断する道路もあり、これも地域の環境に大きな影響を与えている。特に国道304号線はイーサーン地域の物流の中心であるナコーンラーチャシーマーとバンコク湾東岸部の工業団地やサッタヒープ港などを結んでおり交通量が多いため、これらが地域の自然に与える影響は大きいといわれる。
これらの開発はむろん地域の自然に打撃を与えるものの、実際には地元経済に打撃を与えるためこれらを規制することはできない。これは国の開発政策とぶつかる問題であり、この地域の保護をどのように行うべきかという課題を提示している。
一方で、一般の観光客が増えたことにより観光客が動物に攻撃されるという事件も頻発している。これは、手つかずの自然に生息しているため、動物は人間になれていないが、アクセスの良さから野生動物になれていない人間が訪れ、そこにたまたま現れた動物に無警戒に近寄るために起こるものである。この地域では手慣れたパーク・レンジャーでも動物におそわれることがある地域である。一般人のレジャー感覚の訪問にどのように対応すべきかというのも、この地域の課題である。
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